いまさら聞けない、量子コンピュータって何?普通のコンピュータとどこが違うの

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この間、ある方と量子コンピュータの話になったのですが、本や記事の説明があまりに専門的で分かりづらいと聞きました。

ネット、新聞やテレビでも昨今よく見る量子コンピュータですが、一般の人、特に文系といわれている人たちにわかりやすい説明がほとんどないのが現状でしょう。

そこで、今日は量子コンピュータが普通のコンピュータと何が違うのか、実現できると何がすごいのかを、わかりやすく説明できればと思います。

普通のコンピュータというのは、ノートパソコンのほか、スマートフォン、タブレット、家電製品のコントロールパネルなど大小考慮すると様々なところに使われています。

いわゆるデジタルといわれている部分です。デジタルというのは、0や1などの組み合わせで信号や操作をするシステムです。01であれば電気のオン・オフで操作できるので、機械側からすると扱いやすくなります。

コンピュータというのは、そういうものの大きな集まりと考えるとよいと思います。

では、そういうシステムを作るのにどうするかというと、まず、ある程度の電子の集まりを扱える素子を用意します。これが、有名な半導体です。

いくつかの半導体をくっつけると、トランジスタやダイオードという「切り替え」に使われる回路の素子ができます。

それと他の回路、抵抗などを使って、01を入力・出力できる回路を作ります。これをゲートといます。

そのゲートを多数用意してそれらを組み合わせることによってコンピュータができるのです。(現実はもっと複雑ですが、簡単に言うとこんな感じです)

結構、道のりが長いとお気づきになったのではと思いますが、これが普通のコンピュータです。

量子コンピュータというのは、その半導体、トランジスタやダイオード、ゲートなどの「中間管理職」を使わずに、電子などの量子的な性質を直接使ってデジタルのシステムを作ろうというものです。

つまり、流通経路がほぼ直なので、計算がひじょうに早くなるというのが量子コンピュータの仕組みなのです。

実際どうやってつくるの?となりますが、理論的には、電子などの物理的な性質を組み合わせてデジタル的なものを計算に利用する感じです。

現在もいろいろ進展しています。技術的にいろいろ大変なところもありますが、新たなものとして人類に何らかの成果は提供されることと思います。(100%どうこうなるとは言えませんが)

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2021年ノーベル物理学賞の報告を、テレビでは聞けない少し違った視点で

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2021年の物理学賞が発表されました。今回は複雑系への研究と貢献に対してですが、眞鍋淑郎氏、Klaus Hasselmann氏とGiorgio Parisi氏に授与されました。

以下、アメリカの雑誌、Physics Todayの記事をを参考にさせていただいて、こちらの独自目線も含めて解説します。

眞鍋氏は、太陽からの輻射、地球大気の対流、蒸気の潜熱などのパラメータが絡み合って実現する初期の天候モデルを発展させました。それによって1967年の炭酸ガスと地球表面温度の上昇を導き出しました。

それから約10年後、Hasselmann氏は、確率過程の天候モデルを作り、天気のゆらぎをノイズとしてとらえ、離散的な現象が天候に影響を与えることを示しました。

一方で、Parisi氏は、いわゆる「スピングラス問題」といってどのように磁気スピンが周りのエネルギー状態や幾何学的な状況によって、そのパターンが決まってくるかを研究していました。スピンとは磁気を帯びている物質の基本的な単位と思っていただけるとよいと思います。この研究結果が数学、生物、神経科学や機械学習の分野にも影響を与えました。

複雑系というのは、定式化することが難しいことで有名です。ただ単に、いろんなことが絡み合っているからというだけでなく、予測可能なモデルが作れるかが重要な点です。

そもそも物理科学における気象予報の始まりは、天文観測からですが近年では、ローレンツという物理学者が対流などを考慮したミクロなモデル、すなわち雲の動きを予測する方程式がはじまりでした。

しかしながら、それをコンピュータで解いてみてわかったのは、そもそも3日より先の天気は予測できないというものでした。

気象なども含めて地球全体の現象を予測するのは至難のワザなのですが、より使いやすく、より理論的な考察に富んだモデルによって長期的な予測ができるというのは、画期的なことになります。

先ほど言った通り、複雑系を逐次、正確に追うことは不可能ですが、確率的に予測できて長期的に十分、使用に耐えうるのであれば、人類の生活においても様々な点で貢献することになります。

また、地球上にあるものすべてが複雑系の要素を含んでいます。原子や分子などの構造、生物、動物、人間も含めて大なり小なり複雑系です。

逆にその複雑さを解明することによって、いろいろなものにある基礎的な原理が分かり、そこから人類に貢献できるようなものが生み出されるというものも興味深いところですね。

編集後記
日本国内では今回のノーベル賞に関して、温暖化や気象のことしか話していませんが、物理学に長く従事してきた者からすると「複雑系・非線形系」の研究者全体に対しての評価とみています。この分野が発見また発展してきたのは20世紀の中盤から後半にかけてです。複雑系は簡単に結果が出るわけでもなく分析手法も多数あったのですが、大きな進展というよりは、長い間かけて少しずつ発展してきた分野です。うがった見方ですが、今回は、この3人をもって、今まで従事してきた方々すべてを表彰したと思っています。

高校で習う数学や物理が、大学で勉強するための基礎だと思っている方、ダマされていますよ!

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現在、世界中で、名前や年数は違えど、小学校、中学校、高校、大学という感じでいくつかの段階を経て学んでいくのは、ほぼ一緒だと思います。

ただ、カリキュラムと言いましょうか、内容や表現は、国や地域によって変わってきます。

そこで、今日は、この教育システム、特に日本のカリキュラムに関して、高校で習う数学や物理の内容が、大学で勉強するための準備になっているのかどうか、議論してみたいと思います。

確かに、小学校と中学校で習うことは、初等的な内容で、生活や仕事をしたり、さらに学ぶために必要最低限であることは確かです。

しかしながら、高校で習う内容、特に数学と物理に関して言えば、大学でさらに勉強するための基礎を教えている内容ではないのです。基礎ではなく、切り取った内容でしかありません。

実際、数学に関しては、受験問題に沿った公式を覚えて、類題が解けるようになるための勉強です。物理学は、数学に似ているから、数学っぽく教えておけば、2度手間にならないから楽だろう、って感じでカリキュラムを組んでいます。

これは、当然、文科省などから「ここまで教えてもいいけど、これ以上は教えてはいけません」と通達があるのが一つの原因ですが、大学受験があるから学校側も受け入れざるを得ないやり方だと思います。

「なぜ、大学受験なの?」に関してですが、それは、一斉に行う大学受験で粗相があったら、みんなに大バッシングを受けるからでしょう。「こんなの習っていない!不公平だ!」などいろいろ文句が出ます。

それに加えて、あまり簡単なことしか教えないようであれば、受験問題を作る側もバリエーションが減ってしまうので、それなりの量も教えてもらわないと困ります。

あと、物理や数学は、暗記するような学問ではなくて、基礎原理から膨大な概念を網羅し展開していくものなので、うまい具合に高校生のカリキュラムを作るのに苦労した、という理由もあるのでしょう。

ですから、日本の高校の数学と物理は、ひじょうに中途半端な構成になっています。もし、学問としての理論に踏み込めば、際限がない世界ですからね。カリキュラム作りに関しては、ある意味、同情しますが。。。

はっきり言いましょう。高校数学と物理は、大学で勉強するための基礎ではありません。高校で物理を取っていなくても、大学初年度レベルの物理を勉強することは可能です。

もちろん、簡単ではありませんが、やる気さえあれば、中学レベルの数学や科学の知識をもって、約1年で十分全体像がつかめるくらいになります。むしろ、余計な先入観がないために、すんなり学ぶことができるでしょう。

学校の世界にも大人の事情や闇があります。もちろん、知らなければ、騙されるのは仕方がないでしょう。でも、強く思い込んでしまうのは、新しいことや真実を学ぶことへの弊害になるということも、頭の片隅に置いておくことが大切かもしれませんね。

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学校で習わない事実!数学と物理の違いって知っていますか?

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英語と日本語(国語)の教科の違いは皆さん、ご存じでしょう。しかしながら、数学と物理の違いというものは意外と分かっていないんではないでしょうか。

端的に言えば、物理学は科学になります。しかし、教科書をのぞくと、数式が羅列されていて、問題を解く方法だけ見ると、数学とほとんど変わりません。

したがって、意外と大人の方でも、正確な違いや数学と物理学の関係性を説明できない人が多いようです。これは、学校で教えていないのが原因だと思いますし、受験科目のうちの一つであれば、そこまで知る必要がないと思われているかもしれません。

他にも、物理学は難しいので学校で教えなくなる傾向があったり、ノーベル物理学賞も、日本人が取ってないと一般のテレビで報道すらしないというのを見ても、そもそも一般の理解がないという現状がわかるでしょう。

それでは、物理学と数学の違いは何なのでしょうか。数学は論理世界への探求で、物理学は、自然世界の探求する学問です。

「そんなことはわかっている」という人も多いと思います。それでは、もう少し掘り下げてみましょう。数学というのは、自然で何が起こっているのかはどうでもよく、論理的であるかどうかに興味があります。

その論理を展開していくにつれてあるルールが見えてくると、それを証明します。このように、論理の世界を広げていくというのが数学の役割になります。論理的で緻密であることが求められるのですが、人間の住んでいる世界との整合性は関係ありません。

一方で物理学は、自然の反応(実験結果)をもとに、どのようなメカニズムをしているか解明する学問です。当然、その全貌を明らかにすることによって、理論が構築され、その理論から、実験結果を一般的に予測できるかどうかが役割になります。

したがって、物理学は、たとえ数学的に過去の実験を説明できても、未来の実験結果を予測できなければ、その理論は淘汰されます。物理における決定的な証明は、数学的なものではなく実験結果なのです。

ですから、物理学を数学的に証明するというのは無いんですね。意外と皆さん、この部分を勘違いされています。もちろん、物理学の一部を数学的に定理化して証明することはありますが、自然のふるまいそのものを数学的に証明することはできないということです。

当然、数学的な考察が物理学を発展させたことも歴史的にありますし、物理学で使っていた概念を数学化したものも多々あります。ただ、役割の違いが分かっていなければ、誤って利用したり、意味のない議論になってしまいます。

現在の日本教育では、歴史的な役割という側面で教科を教えていません。これは、受験でより多くの点数を取ることが社会的な目的になってしまっているからでしょう。

未来のための教育をするという視点から改革していくには、単なるカリキュラムの変更ではなく、人類が築いてきた知識と知恵に対する尊敬や感謝がないと根本的に進まないかもしれませんね。

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2019年ノーベル化学賞の中身について、説明します

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受賞というのは、評価を受けたということです。「誰が」、というのは多くのニュースで話されているので、ここでは、「誰が何を」に絞って、科学的興味に基づいて説明しましょう。

完成に至るまでの内容は、基本的に、アメリカのジャーナル、Physics Todayの記事を参照しています。

まず最初に、電池のメカニズムは酸化還元反応にあります。放電過程では、陽極での酸化反応によりイオンが解放され、液体電解質溶液を通って陰極に移動し、還元反応を受けます。

一方、電子は接続された回路を通過します。再充電では、酸化還元プロセスが逆になり、イオンは陽極に戻り、別の放電サイクルの準備が整います。これは、電池のオリジナルのアイデアで、学校で習いましたよね。

スマートフォンや電気自動車などに電力を供給するリチウムイオン電池は、1973年の石油危機の少し前に始まりました。アメリカエネルギー委員会は、当時MITのリンカーン研究所にいたグッドイナフ氏に、フォード社のバッテリー開発者によるプロジェクトの評価を依頼します。

そこで、ナトリウムと硫黄を使用した溶融塩電池の実現可能性を吟味し、約1世紀前に開発された標準ではあるが時代遅れの鉛蓄電池を置き換えることに成功しました。しかし、1960年代後半までに、高い動作温度と腐食の問題により、これらのバッテリーに実用面で問題が生じてきました。

当時エクソンの研究科学者だったウィッティンガム氏は、電気自動車に電力を供給するだけでなく、オフピーク時に太陽エネルギーを蓄えることができる低温高エネルギーのバッテリーを検討しました。そのため、1976年に二硫化チタンの陰極とリチウム金属の陽極を組み合わせたバッテリーを開発しました。

リチウムの標準還元電位は-3.05 Vと低いため、高密度で高電圧のバッテリーセルにとって特に魅力的でした。ウィッティンガム氏の設計では、TiS2(二硫化チタン)構造の層間に挿入し、酸化還元反応中にリチウムを可逆的に保存する手段を提供したのです。

ただし、リチウムは高い反応性を持っており、危険な反応を避けるために空気や水から隔離する必要があります。ウィッティンガム氏は、数年前に実施されたリチウム電気化学実験で他の研究者によって慎重に設計およびテストされた非水電解液を使用することにより、この問題を解決しました。

これは大幅な改善でした。ウィッティンガム氏のリチウムイオン電池は、鉛電池よりも高いセル電位を持ち、2 Vと比較して2.5 Vでした。しかし、ウィッティンガム氏のリチウムイオン電池は安定していませんでした。放電と再充電を繰り返した後、リチウムの細かい糸のような結晶が陽極上に成長します。最終的に、それは陽極と陰極を隔てる障壁を破るのに十分大きくなり、電池は短絡したり爆発したりします。

1980年に入り、グッドイナフ氏は、その問題を直接解決はしませんでしたが、陰極用のはるかに優れた材料を思い付きました。オックスフォード大学の水島浩一氏と、彼の同僚とともに、コバルト酸化物リチウムが陰極に使用できることを発見したのです。

TiS2と同様に、酸化コバルト構造にはリチウムがしっかりと挿入されているため、陰極に十分なエネルギー密度を提供できます。酸化コバルトの構造と電位の関係に関するグッドイナフ氏の洞察により、電池の性能が向上しました。

電圧は2.5 Vから4 Vに増加し、新しい電池はウィッティンガム氏の設計よりも改善されましたが、システムは依然として陽極として反応性の高いリチウム金属を使用していたため、企業は電池を商業規模で安全に製造できませんでした。

1985年に旭化成株式会社で働いていた吉野氏が陽極の材料をグラファイト(黒鉛)に置き換えました。これは電気化学的条件で安定しており、グラファイトの結晶構造に多くのリチウムイオンを収容する構造になっています。

ケンブリッジ大学の化学者であるクレアグレイ氏は、グッドイナフ氏のリチウムコバルト酸化物の陰極と吉野氏のグラファイトの陽極を使用して、「もう、爆発などから身を守る大掛かりな実験施設なしで、電池が組み立てられるようになった」とコメントしています。

さらに重要なことは、グラファイトの陽極は軽量であることと、電池の性能が低下する前に数百回充電できることです。その後すぐに、ソニーは旭化成と提携し、家電製品のすべてのニッケルカドミウム電池をリチウムイオン電池に交換しました。

これが、リチウムイオン電池の実用まで至る経過です。もちろん、細かい技術や科学的な試行錯誤もたくさんあったと思いますが、このようなメカニズム自体が、電池のみならず、他にも応用できると面白いですね。

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日本人のノーベル物理学賞は、喜ばれるのに、物理学の授業が嫌われる理由

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物理学と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?恐らくノーベル賞が一番有名でしょう。ニュートンやアインシュタインなどの名前を思い浮かべる人も多いかもしれません。または、太陽系、銀河など宇宙の成り立ちと物理学を結び付ける人も多いと思います。

そもそも、物理学とは何でしょうか。自然界で繰り広げられている、物同士の運動をどのように記述するか、から始まった学問です。その事実の積み上げにより、理論的な枠組みが作られ、そこから、いろいろな工学的応用もされています。

小さなものでは、コンピュータに使われている半導体の振る舞い方から、大きなものでは、宇宙の成り立ちや、星の運動も物理学に当たります。

ある意味、構造や力学的な見方において、極めて基礎的な科学の分野でもあります。ですから、物理学の見方を利用して、化学結合や化学反応を分析したり、生物的な現象などの解析などにも使われています。

一方で、応用数学の側面もあって、数学と科学の緊密な関係を科学の側で貢献しているのも物理学と言っても過言ではないでしょう。

したがって、アメリカの大学では、自然科学を専攻する学生すべてが物理学を必須科目として取らなければいけません。科学的考え方を習得する目的でもあります。

ところで、日本ではどうでしょうか。教育のカリキュラムを見る限り、物理の重要性をわかっている人たちが少ないような気がします。

以前、ネットで高校の教師が、「物理学を取る学生が減ってきている」などとコメントしていました。結局、教える方も教わる方も、難しい科目なので、避ける傾向にあるのでしょう。

難易度の一方で、日本の教育全体が、「受験」中心であって、いかに点数を取って合格するかが目的になってしまっているというのも見て取れます。何のために学ぶのかの目的がおかしな方向に行っています。

しかし、身の回りを見れば、物理学と関係のないものを探す方が難しいのです。当然、コンピュータや多くの電化製品は、物理学の応用です。外に出れば、風、音、空、虹なども物理学の理論で一貫してそれらの現象の説明が可能です。

カーナビに使われているGPSも、アインシュタインの相対性理論なしでは実現しませんでした。医療施設にある、レントゲン、MRI、PET、ファイバースコープなども物理学の応用です。

残念ながら、学校では、物理学という学問とその歴史に貢献してきた人間のドラマと、彼、彼女らが実現してきたこと、その背後にある哲学など全部取り除いてしまっています。

教育が正しく行われなければ、多くの人たちをダメにしてしまいます。信念や自主性など無くして、目先のことだけ考えることを薦めるような教育であっていいのでしょうか?

ついつい、考えてしまう今日この頃です。

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今日、本屋で久しぶりに高校の数学・物理のカリキュラムを確認してきました

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最近、社会人の方にも高校数学や物理を教える機会も増えました。かなり長い間、米国の大学のカリキュラムで教えていたので、日本のが懐かしく感じられます。

しかしながら、社会人の方も、「高校の数学ってちょっと現実社会に合ってないよね」という意見も聞くことが多いので、今日は少し、その辺のお話をしようと思います。

基本的に、日本の高校のカリキュラムは、ここ何十年も変わっていないようです。もちろん、マイナーチェンジはいろいろあるともいますが、いわゆる、原理原則は全くと言っていいほど変わっていないようです。

端的に言えば、「公式」を切り取ってきて、それで解ける問題や類題を紹介するだけの学習カリキュラムです。

本屋で確認したのですが「なぜ」という問にも答えないですし、その背景の説明もほとんどないような参考書ばかりでした。

いまだに、受験ビジネスのための無味乾燥な内容を教えているのか、とため息が出ましたが、逆に、今まで日本人は受験には関心があっても、教育には関心が無かったことも残念に思います。

この間、ある高校生の親御さんが言っていたのですが、「塾なんかでも、儲けのために授業は多くとらせるのだけど、練習や学習をさせる時間をもうけない」とのことです。

「我々は、何のために学ぶのか、何のために学問を追い求めるのか」という感覚が不在なんですよね。

私も、もう少し頑張らないといけないと感じた今日この頃でした。

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そもそもブラックホールとはなにか?(2019年4月11日)ブラックホール撮影記念

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ブラックホールというと、かつてはSFのようなもので、理論的には存在可能であっても実際にあるのかどうか、長い間議論されてきたものです。

間接的に観測としては、非常に強いX線を白鳥座のあたりで検出されて、恐らくブラックホールではと言われていたものもありました。今回は、世界各国の観測地からのデータを集結して、ブラックホールの画像を撮ったというのは、素晴らしい進歩でもあるでしょう。

当然、「これが何の役に立つのか?」という質問も出てくるでしょうが、科学の進歩は、すぐには役に立ちませんが、将来長きにわたって役に立っていくものです。

今日、テレビで、「ブラックホールに光が引っ張られるって何?」、「光が重力によって引っ張られるの?」という質問があって、そこには物理学者がいなくて、誰も答えられませんでした。そこで、少し簡単にですが、素人にもわかるように説明してみましょう。

そもそもは、重力から脱出する、とはどういうことでしょうか。地球を考えてみて、飛行機では、地球の重力圏からは逃れられません。でも、ロケットは地球の外に出ていけます。理由は、それだけのスピードを出せるからです。この速度を第2宇宙速度と言い、約11.2km/sです。時速では、40300km/hになります。

言葉を変えると、その速度があれば、地球の重力に打ち勝てるということです。ところで、重力はどのように決まるのでしょうか?この力は、物体の質量と半径によって決まります。質量には単純に比例しますが、半径には2乗に反比例するので、同じ質量で半径が小さければ小さいほど重力が大きくなります。

では、光のスピードを持ってしても脱出できないほどの重力をもつ天体の質量と半径は、どのようになるでしょうか?とりあえず、ここでは、質量を一定にして、半径がどれだけ縮むと重力が光を「捕まえる」のかを考えてみましょう。

例えば、太陽を考えてみましょう。太陽の半径は695510kmです。実は、これが3kmまで縮むと、光の速さでも重力にあらがうことができなくなります。これが、いわゆるブラックホールになります。

もちろん、太陽がそこまで縮むのは不可能ですが、他の天体で条件がそろえば、光でも抜け出せない重力になるのです。面白いですよね。

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科学についてみんなにもう少し知ってほしいこと。。。

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この間、テレビで火山の中を透視する技術を使って火山研究している、という話題を報道していました。この技術は、ピラミッドの中を見るためにも使われたもので、宇宙線の一つであるミューオン(μ粒子ともいう)を利用したものです。

ミューオンは電子などと同じく素粒子と呼ばれるものの一つで、当然、肉眼では見えません。宇宙線は宇宙から無数に降り注ぐもので、基本的に人体や生物に害があるものは地表には届いていません。

その番組で、コメンテーターが「そのような見えないものを利用するなんて、すごいですね」と言っていました。確かに、そういう応用は素晴らしいと思いますが、少々、聞き捨てできなかったので、詳しくお話しします。

そもそも、宇宙線は、20世紀初頭、今から約100年前に発見されたものです。そこから、科学としていろいろな形で研究されてきました。

その後、物理学で量子力学や素粒子論の理論的発展も相まって、宇宙線の種類も特定されてきました。ミューオンは1936年に宇宙線から発見され、一時は、湯川秀樹が提唱した中間子だと思われた粒子です。(後に、中間子は1947年に発見されたパイオンという粒子だとわかりましたが)

つまり、ミューオンなどの粒子は、科学の世界で長い間、多くの人によって研究されてきたものなのです。100年の時を経て、今、火山やピラミッドの研究に応用されてきた、ということです。

ここで言いたいのは、応用された事実だけ称えて、それ以前の人類の努力がなかったように伝えられるのは、科学者としてはつらいものがあります。

このミューオンも含めた物理科学の研究には、いくつものノーベル賞を獲得しています。しかしながら、科学史として「どのように人類にまたその社会に貢献してきたか」という教育がされてきていない事実は、非常に残念に思います。

(日本人はノーベル賞に関して、日本人が受賞すればお祭りになりますが、その中身には、ほとんど言及しないのも残念ですが)

「エジソンは偉い人」であることに異論はありません。数々の発明などにより大きな貢献を人類の生活にしてきました。

しかしながら、エジソンの電気機器に関する発明は、その前にファラデー、エールステッド、クーロン、アンペール、マックスウェル等の電磁気に関する研究結果もあったから成り立ったという事実も知ってほしいな、と思いました。

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数学、科学、工学の違いがわかりますか?

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たまに、日本語の記事を読んだり、日本の方と話していると、数学と科学、科学と工学などを混同している方が多いのに気が付きます。

恐らく、理系・文系という区別の中で曖昧になってしまっている感じでしょう。加えて、どの教科で点数を取るかを目的とした受験の一部としか見ていないからなんでしょうか。

そこで、少し数学、科学、工学とは何かについてお話ししましょう。

まず、数学は、基本的なルールを作り、そこからいろいろな事実を導き出し、その数学的世界観を広げていく感じです。当然、論理的に緻密な世界でなければいけないので、世界構築の作業が数学にとっての肝になります。

ルールに従い、論理的であるということが主体であるため、人間が生活している現実世界と必ずしも一致しません。むしろ、人間世界とは全く違うものが数学的な世界です。

一方で、科学とは、自然を探求する学問で、人間が面している世界がどのように構成されているかを調べるのものです。ですので、実験結果が最終的な証明手段となります。

科学に数学を利用するのは、自然が数学的である部分があるからで、その一部を利用しているだけです。また、数学的な科学モデルも無数に作ることができますが、それが、実験結果を予測できなければ、たとえ数学的に正しくても淘汰されてしまいます。

最後に工学ですが、良くエンジニアリングとい言われるものです。工学は、人間の生活や人間が実現したいことに対して行われる技術になります。その実現手法に電気を使えば、電気工学、力学的なものに基づいていれば機械工学など、いろいろな分野があります。

とにかく、工学は、人間が作るという発明に関したものと言えばよいでしょう。そのために自然科学や数学の一部を利用しています。

それぞれ重要な役割があるのですが、日本では科学に対する認識が低いように思えます。

確かに、日本のように数学、科学、工学の垣根が低いと比較的簡単に分野間で交流できるという利点はありますが、それぞれの得手不得手を把握して俯瞰することができないので、新しいことを行うためのリーダーシップが取りづらくなってしまいます。

現在、提供されている教科が何のためにあるのか、たまには考えてみても良いのではないでしょうか。

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