2021年ノーベル物理学賞の報告を、テレビでは聞けない少し違った視点で

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2021年の物理学賞が発表されました。今回は複雑系への研究と貢献に対してですが、眞鍋淑郎氏、Klaus Hasselmann氏とGiorgio Parisi氏に授与されました。

以下、アメリカの雑誌、Physics Todayの記事をを参考にさせていただいて、こちらの独自目線も含めて解説します。

眞鍋氏は、太陽からの輻射、地球大気の対流、蒸気の潜熱などのパラメータが絡み合って実現する初期の天候モデルを発展させました。それによって1967年の炭酸ガスと地球表面温度の上昇を導き出しました。

それから約10年後、Hasselmann氏は、確率過程の天候モデルを作り、天気のゆらぎをノイズとしてとらえ、離散的な現象が天候に影響を与えることを示しました。

一方で、Parisi氏は、いわゆる「スピングラス問題」といってどのように磁気スピンが周りのエネルギー状態や幾何学的な状況によって、そのパターンが決まってくるかを研究していました。スピンとは磁気を帯びている物質の基本的な単位と思っていただけるとよいと思います。この研究結果が数学、生物、神経科学や機械学習の分野にも影響を与えました。

複雑系というのは、定式化することが難しいことで有名です。ただ単に、いろんなことが絡み合っているからというだけでなく、予測可能なモデルが作れるかが重要な点です。

そもそも物理科学における気象予報の始まりは、天文観測からですが近年では、ローレンツという物理学者が対流などを考慮したミクロなモデル、すなわち雲の動きを予測する方程式がはじまりでした。

しかしながら、それをコンピュータで解いてみてわかったのは、そもそも3日より先の天気は予測できないというものでした。

気象なども含めて地球全体の現象を予測するのは至難のワザなのですが、より使いやすく、より理論的な考察に富んだモデルによって長期的な予測ができるというのは、画期的なことになります。

先ほど言った通り、複雑系を逐次、正確に追うことは不可能ですが、確率的に予測できて長期的に十分、使用に耐えうるのであれば、人類の生活においても様々な点で貢献することになります。

また、地球上にあるものすべてが複雑系の要素を含んでいます。原子や分子などの構造、生物、動物、人間も含めて大なり小なり複雑系です。

逆にその複雑さを解明することによって、いろいろなものにある基礎的な原理が分かり、そこから人類に貢献できるようなものが生み出されるというものも興味深いところですね。

編集後記
日本国内では今回のノーベル賞に関して、温暖化や気象のことしか話していませんが、物理学に長く従事してきた者からすると「複雑系・非線形系」の研究者全体に対しての評価とみています。この分野が発見また発展してきたのは20世紀の中盤から後半にかけてです。複雑系は簡単に結果が出るわけでもなく分析手法も多数あったのですが、大きな進展というよりは、長い間かけて少しずつ発展してきた分野です。うがった見方ですが、今回は、この3人をもって、今まで従事してきた方々すべてを表彰したと思っています。

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